Tigris & Euphrates
Lake Assad in Syria

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このユーフラテス下流部,シリア領内に位置するアサドダムは,私にとっては長い間の懸案でした。ティグリス・ユーフラテスの水争いについては,既にこのホームページでも取り上げましたが,このユーフラテス下流のシリア領内に位置するアサドダムについては,砂漠の中で重要な役割を果たしているにも関わらず,詳しいことが分かりませんでした。今回も詳細な情報は分かりませんが,大体の概要を知ることが出来ました。

ユーフラテス川は,トルコとの国境で20万平方kmの流域面積と言われているので,このダム地点の流域は30万平方km足らずではないでしょうか(いろいろ英語で試してみたけれど,よく分からなかった)。1975年に旧ソ連の技術者によってダムが完成し,1978年に10機合計88万KW(落差約50mのカプラン水車)の発電設備が完成し,現在までロシアの技術者の維持管理に関する協力を得ながら順調に運転しているようです。

ダムは,基本的にはアースダムで,高さ60m,ダムの長さ4.5km,底幅512m,頂幅19m,で盛り立て総量は41百万立方mに達しています。このような形は上流のトルコのダムでも見られました。右岸側に8門のコンクリート部分の洪水吐があり,更に右岸に10台の発電器を納めた発電所があります。左岸には大規模(毎秒100立方m)な灌漑用水の取り入れがあり,下流の砂漠地帯を灌漑するとともに,池の中からポンプアップしてアレッポ方面の灌漑も行われています。案内してくれた人が言っていたように,発電が主目的ではなく灌漑が目的だった,というのは,よく分かります。でも発電も,全国の設備が約800万KWだから,その10%以上をこの発電所が受け持っていることになります。

乾期の終わりにも関わらず,141億トンの池は殆ど満水で,この池は上流への長さが80km,湛水面積が640平方kmに達しています。トルコとの水争いで述べたように,トルコは国境で自然渇水量が毎秒100立方mにも関わらず500立方mを1987年の協定で約束していますが,これだけの大きなダムが下流にあるのに,どうしてトルコは年間総量の約束をしなかったのか,と不思議に思われます。事実あるアレッポ市の高官は,「我々は水問題は技術的な問題でなく政治問題だ」と言っていましたが,宜なるかな,と思います。上流の堆砂等環境問題はよく分かりませんでした。




発電所から見たダム本体
右はアースダム部分で
左に一部見えるのが洪水吐




洪水吐全景,8門のゲート
建物はダム管理室とゲート操作場




放水口地点から下流の
ユーフラテス川を望む




上流側洪水吐頂上より
乾期の終わりにも関わらず
141億トンが殆ど満水
砂漠の中では貴重な水源である


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